おや、
あなたも昼ごはんを食べに行くんですか?
もしよかったら、お勧めのお店があるので、一緒に行きましょう。
え、お店の名前ですか?
「こいそ」っていいます。
八王子駅に近い主要道路、この甲州街道沿いのアーケードにあります。
ダイエーからずっと西へ進み、郵便局や吉野家を通り過ぎて、アーケードの屋根が始まる部分のお店です。
とりたてて目立つ店ではないので、目に止まらないですよね。
僕も教えてもらうまでは、こんなお店、知らずに素通りでした。
ショーウィンドウのメニュー、魅力を感じないでしょう?
さぁ、中に入りましょう。
え?
今日はやめとく?
いやいや、
いいからいいから。
まぁ、とりあえず中へ。
ンゴォー(自動ドアの開く音)
おばさん「…いらっしゃいませ」
この水木しげるのマンガに出てきそうな人が、店員です。
どうです、お店の雰囲気
悪いでしょう?
時代に取り残された喫茶店ですね。
狭いし、照明も暗いし。
外が明るいと余計に、ですよ。
まぁ、静かですけどね。
お客さん誰も喋ってないし。
BGMすらないし。
聞えるのは甲州街道を走る車の音と、隣のおじさんが新聞をめくる音だけです。
コトッ(水の入ったコップを置く音)
あ、ここの水は気をつけて下さい。
ただの水道水ですから。
さて、何を頼みましょうか?
ん、メニュー表をお探しですか?
ここにはそんなものはありませんよ。
おばさん「ランチですか?ランチならハンバーグ、焼肉、ミックスが500円、豚カツが600円ですけど」
焼肉って言っても、豚のしょうが焼きみたいなものですけどね。
以前は壁にメニューの紙が張ってあったんですけど、いつのまにかなくなりました。
僕は豚カツにします。
あなたは?
ハンバーグですね。
大盛りができるかって?
う~ん、できますけどあまりする人はいないですよ。
理由は…、まぁ、あのおばさんに「大盛り」って言ってみて下さい。
おばさん「大盛りですか?そうなると100円増しになりますけど。いいんですか?」
あの説明で、たいていの人は辞退してしまいます。
ランチの味は、まぁ、美味しいですよ。
この店の営業時間は12時から1時半くらいまでらしいです。
この前、1時半までゆっくりしてたら
おばさん「あの、そろそろ店を閉めたいんですけど」
と言われちゃいました。
店の厨房には棚があって、食器が並んでいます。
パフェを入れるグラスがあるんですけどね、頼んだら出てくるのか、ちょっと気になります。
ンゴォー(自動ドアの開く音)
おや、何も知らず入ってきたお客さんのようですね。
周りを見渡してます。
この雰囲気に戸惑っているようですね。
別におばさんは、「いらっしゃいませ、どうぞこちらの席に」と愛想は振り撒きません。
ンゴォー
あぁ、引き返していきましたね。
これもこの店の日常風景です。
一体どうして、僕がこんな店を気に入っているかって?
それはこの店は「素」なんですよ。
別に無理して愛想を振りまいている訳ではなく、来る人は来ていいし、来ない人は来なくていいという姿勢。
もし、お店を繁盛させたいのにこの接客だったら怒りますけどね。
向こうがフラットなだけに、僕もフラットでいられるんです。
どうです、明日はここの焼肉ランチを食べませんか?
……
…心中、お察しします。
※この記事は2006年にmixiに書いたものです。10年以上前のネタなので現在は、文章の描写と変わっている部分もあります。
アーケードも今は取り払われていますし、ダイエーも吉野家もなくなりました。
文章中のお店の外観画像は2018年のものを使用しています。
そちらの方が雰囲気が伝わりやすいと思ったので。
ちなみに2006年当時の画像はコチラです。
あれからお店の中はどうなったのでしょうか。
グーグルマップで見る限りでは今もやっていそうですが。
どなたか行ってみて下さい。
住所は
東京都八王子市横山町10
です。
「食べログ」を見ると、現在営業日、営業時間はさらに短くなっている様です。。。
さらに、ンゴォーと開いていた自動ドアは、現在、おばさんが手動で開けてくれるみたいです。。。